顎変形症治療で上顎が治療対象となった場合、リスクとして鼻の変形が取り上げられます。その中でも、リスクとして取り上げられる小鼻の広がりの原因と、対処方法を合わせて紹介します。
目立たず多くの症例に対応できる術式
上顎手術の術式
「上顎の手術ではなぜ鼻が変形するのか」、その原理を理解するために、まずは上顎手術について簡単に見てみましょう。
顎変形症の治療で上顎も治療となった場合にとられる手術方法としては、主に2つあります。
・上顎前歯部歯槽骨切り術(じょうがくぜんしぶしそうこつきりじゅつ)
・ルフォー1型骨切り術:ルフォー
上顎前歯部歯槽骨切り術(じょうがくぜんしぶしそうこつきりじゅつ)
一つ目の上顎前歯部歯槽骨切り術は、上顎の骨のズレの中でも前歯のあたり(上顎前歯部)に異常が認められる場合に取られる方法です。
上顎前歯部において、矯正では対応できないほど大きなズレの異常がある場合に行われます。通常は第一小臼歯当たりを抜歯し、その部分から上に骨を切りだします。
噛み合わせの異常に応じて、切断後の上顎の位置を決めます。抜歯した分の骨を切除することで、前突した上顎を後ろに下げるなどの治療が可能となります。
ルフォー➊型骨切り術:ルフォー
上唇の裏の鼻に近い部分で歯根を避けながら切り、分断させます。(実際は直線ではない等ありますが、概要として説明します。)
そして、骨のズレとして存在する骨格の位置等に合わせて、顎骨を調整します。
これがいわゆるルフォーと呼ばれる、上顎手術で用いられる術式です。顎骨を分断させることで、顎骨を三次元的に自由自在に動かすことができます。
下顎だけでは治せない大きな状態に対して取られる有効な手段であり、ズレの大きい症例に対しても治療が可能になります。
位置や大きさ等を調整できるため、例えば小顔目的のような美容整形においても用いられます。
以下の美容整形の医院サイトでは、ルフォーの詳細が写真付きで分かりやすく紹介されています。より細かく見たい方は参考にしてください。
ルフォー(中顔面短縮・Lefort-1) 診療案内|マックスファクス銀座クリニック (maxfacsginza.com)
ルフォーには、1型の他、2、3型まであります。顎変形症の場合は、1型が用いられます。
(参考:ルフォーについて【保存版】顔面骨折とは?症状やCT画像診断、治療法を徹底まとめ! (xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp))
鼻の変形リスクは複数種類がある
小鼻の広がり
しかしながらこの術式、鼻の変形をもたらすリスクがあります。鼻の部分が複数あるように、鼻の変形には様々な種類があります。
・鼻の部位の名称(引用:小鼻縮小術(鼻翼縮小)|鼻整形なら湘南美容クリニック【公式】 (s-b-c.net))
・鼻の広がりの例(参考:上顎骨骨切術後の鼻変形に対する鼻修正術|骨切り専門クリニカ市ヶ谷 (kotsukiri.com))
- 小鼻の広がり
- 鼻先が上を向く(ブタ鼻)
- 鼻先が低くなる
- 鼻が曲がる
その中でも、見た目の問題として、「小鼻(鼻翼)の広がり」が挙げられるのです。もちろん必ず広がるわけではありません。どのくらい広がるかは、手術によって上顎をどのように動かすかによって変化します。
特に広がると言われているのが、上顎を前方に動かす場合です。これは鼻を支える骨全体を前に出すため、鼻を押しつぶすような形になり、小鼻の広がりにつながります。
上図では上顎を前方に移動しています。鼻の土台となる骨自体も前に動かしているため、鼻も前方に移動します。その際は鼻先は動かず、小鼻が押しつぶされるような形となり、鼻が低く、小鼻が横に広がる状態となります。
正面から見るとその違いが分かりやすくなります。鼻先を固定しながら、鼻全体を後ろから押し潰している状態と同じため、鼻が広がってしまうのが分かります。
もちろん鼻の広がりは必ず起きるわけではなく、動かし方によってさまざまです。そして、医師による鼻の広がりを抑える処置によっても変わります。
対処方法は主に2つ
どのように広がりを防ぐか。その方法としては、手術中の処置と、手術後の美容整形の二つです。
手術中の処置
手術では顎のみ処置するわけではありません。上顎を手術する際には鼻を糸で縛り、広がりを抑えるための処置がされます。
その方法とは、糸で鼻を縛る方法です。
(引用:上顎を引く(上顎ルフォー1型骨切り術(Lefort-1)) - 手術の方法 | 顎矯正手術 | Dr.ヒロヒの顔面骨形成術 (fbcs.jp))
上記のように、手術をした後は、広がった鼻を戻すために糸を使って縛ります。手術用の糸を使用し、特定の部分から絞ることで、鼻の鼻の広がりを調整することができます。
病院と医師によって対処法はある程度異なると言われますが、上記の糸による鼻の広がり防止は大抵の手術医によって実施されるそうです。
Twitterの質問箱でも「閉創の際に糸で縛るか?」という質問をもらったこともありますが、基本行います。行っていないドクターはいないと思っています。
両顎手術後の鼻の変化と鼻尖形成|骨切りドクター宮崎 (note.com)
私自身、3カ所ほど手術について話を伺いましたが、どの病院でも糸で縛る処置をとると言っていました。
そのうちの一つの医院では、糸で縛るのと、ノギスという道具を使い、もともとの鼻の形により近づけるように処置すると言っていました。糸を縛るのはどこでもやっているそうですが、どのくらい縛るかの判断の際にノギスなどを使用するかどうかは、執刀医によって変わると言っていました。
手術を受ける場合は、担当の方に聞いてみることが一番よいでしょう。先生によっては、糸で縛るほかにも、ノギスのような独自の方法をとることで見た目の面も考慮している場合があります。
実際に、病院に足を運び、手術を担当する医師に質問をしてみてください。
手術後の美容整形
上記の処置を施したとしても、鼻の広がりは患者を悩ませることが起きます。
糸で縛る処置をしても、手術前よりはある程度変化してしまったり、手術による顎の動かし方で処置に限界があったりする為です。
その際の対処法は美容整形になります。以下の二点がその例です。
小鼻縮小術・・・小鼻(正面から見た鼻穴の部分)の広がりや大きさを調整する整形方法。(小鼻縮小術(鼻翼縮小)|鼻整形なら湘南美容クリニック【公式】 (s-b-c.net))
小鼻縮小術・・・鼻尖(鼻の先)の高さや形を形成する整形方法。小鼻縮小術で鼻尖に変形があるなどの場合に実施する。(鼻尖形成術(だんご鼻解消術) |鼻整形なら湘南美容クリニック【公式】 (s-b-c.net))
仮に術後に広がってしまったとしても、ある程度修正の方法が確立されています。もちろん費用が掛かるわけですが、手術によって精神的な悩みが尽きない場合の最終手段となります。
コメント
手術の良し悪しは、執刀医の技量や方針で変わると言えると思います。本来顎変形症の手術は、咬合面の改善を目的としたものですから、鼻の広がりという審美面は対象外といってもよいことになります。
しかしながら、顔貌の悪化は患者の人生に影響を与え、健康的な生活を害する可能性があります。当然病気治療の根本である、患者の健康的な生活を目指すことからに反していると言えるわけであり、執刀医は一方に偏りすぎない治療が求められると思います。
ということで、鼻の広がり等、見た目の面で不安なことは訴えてみた方がよいです。人生が掛かっているのですから、ある程度は欲張って納得した上で手術に臨むことが大切です。