顎変形症治療では上・下顎骨を骨折し理想的な咬合を実現させます。
神経が入り組んだ顔の骨を切断するため、神経麻痺リスクが当然存在します。顎変形症関連論文や実体験から神経麻痺の発生率や症状を取り上げます。
顎変形症手術による神経麻痺
オトガイ周辺の神経
顎変形症手術による神経麻痺では、顎周辺(下顎のオトガイ周辺)で発症が多いです。
下顎にはオトガイ神経という大きな神経があります。それ以外にも複数神経はありますが、手術の特性上オトガイ神経を傷つけるリスクがあります。

下顎の手術において神経麻痺となるのは、顎骨を切る場所がこれらを含む下顎神経に近い場所となってしまうためです。
実際に、どの程度の発症の確率があるかは正確には言えませんが、大きな問題になる神経麻痺の確率は低いと思われます(多少の神経麻痺は起きる可能性あり)。
顎変形症手術による神経麻痺(末梢性)について取り上げた論文:顎矯正手術後に末梢性顔面神経麻痺を生じた5例では、実際の手術による神経麻痺の他、該当病院での神経麻痺の発生率を記載しています。
当科では2001年から2015年までの15年間に顎矯正手術を910例に施行しているが、術後に末梢性顔面神経麻痺を認めたのは今回の5例で、発生率は0.55%であった(Table 1)。
顎矯正手術後に末梢性顔面神経麻痺を生じた5例
1病院での発生率とは言え、1000に近い症例の内で1%にも満たないということからは、神経麻痺の発生確率は非常に低いと言ってよいと思います。
その他神経別麻痺と症状
数多くの神経が存在しますが、それぞれの役割が異なっている点同様、神経麻痺によっては多様な症状が引き起こされます。
以下は顎変形症手術(顎矯正手術)後の麻痺・痺れ・感覚異常からの引用です。手術により起こりうる神経麻痺を神経別の症状で記載されています。
- 下歯槽神経の損傷:下唇や顎先に感覚麻痺やしびれが生じることが一般的です。術後には触れても感覚が鈍くなりピリピリとした感覚や痛みが続くことがあります
- 舌神経の損傷:舌の前部分に感覚麻痺やしびれが発生し味覚の鈍化が見られることがあります。特に、甘味や塩味を感じにくくなることがあり、食事の楽しさが損なわれることがあります
- 顔面神経の損傷:顔の片側の動きが鈍くなり笑顔を作ることや目を閉じることが困難になります。顔の表情がぎこちなくなり不自然な感じになることもあります
- 舌下神経の損傷:舌の動きが制限され発音が不明瞭になることがあります。また、食べ物を噛んだり飲み込むことが難しくなる場合があります
- 迷走神経の損傷:非常に稀ですが声のかすれや嚥下困難、心拍数の変動が見られることがあります。これらの症状は迷走神経が手術によって間接的に影響を受けた場合に発生することがあります
さらに、上記の論文(顎矯正手術後に末梢性顔面神経麻痺を生じた5例)では口周りの神経の他に、おでこや眉周辺での神経麻痺が認められた場合もありました。
顔の神経の複雑さと多さに比例して、麻痺の症状も様々なことが分かります。
ただし、神経麻痺の発症は数パーセントであり、その多くは療養によりかなり改善します。回復のためにメチコバールなどのような、神経回復のためのビタミン剤などが処方されることが多いようです。
このビタミン剤類は、種類によってはニキビが出来やすくなるなどの副作用もあります。また、神経回復に大きな効果があるかどうかでは、議論があるようです。
私の場合、術後に顎の左部分と唇周辺が完全に麻痺していました。触ってもわからず、動かしにくい感じです。約2年経った現状では、まだ麻痺の間隔はありますが、触った時の感覚はわかり、動かしやすさも改善しています。
術後には神経麻痺回復のためにビタミン剤が処方されました。確かメチコバールというものでしたが、医師の忠告通り飲むとニキビが多く発生しました。
医師からは効果は気休め程度とのことと言われたことと、ニキビが嫌だったため、1、2か月くらい飲んで摂取を止めました。
また、おでこなどの神経麻痺については、担当医から一切話が出ませんでしたので非常にまれな事例と考えられます。障害となる麻痺の多くは上述のオトガイ神経損傷によるものと考えられます。
実体験からの麻痺について
どこが麻痺したか
外側から見て、右下の口角周りが麻痺しました。特に、下顎の右半分の麻痺が深刻で、術直後は触っても感覚が全くありませんし、動きません。

内出血をしている事もわかりますが、確実に周辺組織に影響を与えられたことが分かります。
麻痺が分かった時は、やりやがったなと思いました(リスクの説明もあり仰天することはありませんでしたが悲しかったです)。
麻痺の感覚
ルフォーにより挙上したこともあり、皮膚のたるみと麻痺が合わさるような感じで頬肉が重くのしかかっているような、そんな感覚です。
口をあまり動かさなければ大した変化はありませんが、口角を挙げる際などに明らかに右側と比べて動かしにくさなどが目立ちます。
術後から数年経ち、神経状況は当時と比べてかなり改善はしました。ただ、以前完全な状態ではなく、動かした際のヘンな感覚は常にあります。
下記は、術直後からの神経の状態推移です。
術直後の麻痺が発生したばかり際
⇒左の麻痺部分の口角すら上がらず、感覚もない。水を飲むときに顎に滴っても全く分からないためよくこぼす。
術後半年くらい
⇒口角は多少動かしやすくなる。神経のピリピリが感じれられるようになり、多少触ればわかるようになる感じ。
術後2年くらい
⇒口角はだいぶ動かしやすくなる。神経感覚は依然完ぺきではないが、触れられてわからない箇所は無い(病院での神経麻痺テスト(針で神経感覚測るやる)で問題なし)。
ただし、皮膚たるみによる皮膚ののしかかるような感覚が感じられるようになって違和感は消えない。
顎骨の挙上があれがほぼ確実にたるみが起きます。神経麻痺になって、人と話さない事などで口を動かさないことが多くなるとたるみの予後が確実に悪化しますので、笑顔や口を動かすことは常に意識する方が良いです。医師からも神経回復のためによく動かした方が良いと言われました。