治さなくても生きていける緊急性があるわけではない病気、それが顎変形症というもの...
噛み合わせの悪さで食べにくかったり、顔の見た目も変わってしまったり。治そうと病院に掛かれば...
え、これってどうすれば... 治療費は?期間は?顔変形しないの?
治療の道が開けたと同時に無数の疑問が生まれ、検索せど解決しない不安に苦しまれる方も多いかと思います。
外科的顎変形症治療について
様々な情報を加味した上で顎変形症治療を開始することが重要です。リスクもある治療ですが、保険適用であり噛み合わせが正常になることは非常に幸せなことです。顎骨が変形してしまう要因は様々ですが、この病気による精神的影響や実生活での不便さ等の大きな損失はコストを払ってでも直すべきものです。
しかし「矯正治療の費用が高いから」や、「ある医院で顎変形症適用といわれたから」など、顎変形症治療を選ぶ際の判断を費用面や、一医師の声だけで考えてしまうのは危険です。
社会人ではない方にとってはまず費用面が問題になるでしょう。ただ社会人になれば矯正治療費用の100万ほどは普通に稼げます。そして顎変形症治療による後遺症の可能性も考えればむしろ矯正治療の方がコストは低いとも言えます。
さらに、ある医院での顎変形症適用といわれても、他の医院では矯正治療といわれる場合もあります。矯正治療ではできないといわれたとしても任せる医師によってはある程度の治療が可能な場合があります。
だからこそ、外科手術を伴う顎変形症治療が本当に必要であるのかを自分で納得した上で治療に進むことが重要です。
全体像

矯正治療開始までの段階と、治療開始の段階の大きく二つに分けました。保険治療で病気を治せる一方、治療によるリスクもあり、治療開始までには慎重な判断が必要になるためです。
顎変形症治療は、複数病院の連携治療が必要となる場合が多いです。つまり、矯正を受ける病院と手術を受ける病院が異なり、それぞれの治療は個別の病院で連携しながら治療を進めていくことになります。この記事は矯正と手術する病院が異なる場合を想定います。大学病院だけで顎変形症治療を受ける場合も、矯正医と外科医が異なる先生が担当されるため、火曜病院が一つになる以外は大きな違いはありません。
①病院選び
病院選びのポイントは、①顎変形症治療が保険適用で受けられる医院(厚生労働省指定の「顎口腔機能診断施設」)であり、②専門医/認定医(治療実績のある医師)がいる病院です。
①について、顎変形症治療の保険は条件を満たした医院のみに適用されます。これは「顎口腔機能診断施設」と呼ばれます。全国の地域から対象の医院を検索することができるため、ネットで探しましょう。
②について、治療の良し悪しは医師の技量に大きく関係します。綿密なシミュレーションによりしっかりと計算された上で治療がされるわけですが、患者の症状や治療希望を考えた治療設計は、医師の知識技量に関わります。この判断の基準となるものが、各学会が設定している「専門医制度」です。
学会により様々ですが、一定の技量が客観的に認められていることを知ることができます。病院を選ぶというより、医師から選ぶことで自ずと病院が決まるでしょう。その際の指標として、医師の技量を示す認定医制度が役立ちます。
基本的に、顎変形症治療では病気の診断を受けた病院で治療をしていくことになります。その為、費用や時間的側面から考えて、最初から治療を任せて良いと思える病院を選びましょう。
②診断
顎変形症適用かどうかを検査します。検査ではレントゲンを撮り、患者の顎の状態を観察します。また、歯型を取り、顎変形症適用かどうか、適用の場合の治療方針のために使用されます。
歯並びが悪い場合であっても、顎骨自体に異常がない場合は、顎変形症適用とはなりません。あくまで歯列矯正による改善が見込めない、噛み合わせのズレに対して顎変形症という病気がつけられます。
病院の都合にもよりますが、検査の結果解析や治療方針の作成などで一か月後に再度来院します。
ここでは矯正医院と手術のための病院の2つに通うことになります。両方が同じ病院で実施可能の場合もあります。
③判断
診断後、顎変形症と診断される場合、診断結果に基づいた患者の顎骨状態について説明を受けます。そこでは治療方針について説明を受け、どの術式で、どのくらいの期間で、どの程度の費用が掛かるかなど治療に関する詳細について話を聞きます。
大抵、その場で治療開始とはいかない為、医者からの説明書類を受け取り、持ち帰ってご自身で判断いただくことになります。
手術に関する費用面やリスク面については、当ブログの記事からご参照ください。
リスクを考えたうえで本当に受けるかどうかを判断します。現代の技術では、顎変形症適用の患者に対しても手術をすることなく治療をすることが可能となってきました。料金や仕事等の都合によりどうしても手術が難しい場合や手術を避けたい場合は外科手術は第一の選択肢ではありません。
また、値段が安いから、保険料がもらえるからなどの金銭的理由で顎変形症治療を選択するのは、あまりおすすめはできません。顎変形症治療は数年以上にわたる治療であり、費用や通院などのコストがかかります。ある程度のコストの大きさから、金銭という面で見た最終的な費用の差はそこまで大きなものではないと思います。むしろ治療によるいくつかのリスクが起こってしまった場合、一生障害として残る可能性もあります。
治療費
治療費は保険適用と、高額療養費制度により、大きく抑えることができます。双方は術前矯正を伴う顎変形症手術に対して適用されるものです。後者の制度は申請が必要な場合がありますが、マイナンバーカードがあれば手続きをせずに保険のように自動的に治療費から差し引かれます。
私の場合、最初の手術が約10万円、プレート抜去の手術が約8万円で、手術費用は18万円でした。最初の手術では2人部屋に数日入院したため、費用が掛からない大部屋であればさらに安くなります。また、医師や患者の状況によっても退院が早くなり安くなるかもしれません。
④術前矯正
治療決定後、診断を受けた医院で矯正治療を開始します。
歯列の状況と医師の手術方針に多少よりますが、大抵は1,2年はかかるのが基本です。術前には歯が骨に対してまっすぐに並んだ状態になります。顎骨が変形している顎変形症の場合は、そのために術前のかみ合わせが悪くなります。
保険適用の顎変形症手術では、術前矯正は必ずする必要があります。費用がかさんでもまず手術を優先したい場合、「サージェリ-ファースト」という治療もあります。名の通り手術を先に終わらせる方法です。術前矯正の負担や噛み合わせのずれ、治療期間を削減できる可能性のメリットがありますが、治療費用はすべて自費となります。
術前矯正が必要な理由と、歯並びが悪くなる理由については下記記事をご覧ください。
⑤手術
術前強制完了後、貯血等いくつかの検査や説明を受け、手術となります。病院の状況等によりますが、約1週間ほど入院します。術後は尿管カテーテルの地獄に加え、顔の腫れがひどく、顎の痛みも非常に強いです。食事は液体のみ可能で、固形食べるまでには数週間はかかります。
術前後の状況や顔の腫れなどは当ブログに記しています。
⑥術後矯正
術後も術前矯正と同じように歯列矯正をします。歯列を骨に対してまっすぐに並べる術前矯正とは異なり、術後矯正の目的は歯の微調整と固定化に重きを置いたものです。
矯正した歯はその位置を、矯正前までに戻ろうとする力がかかります。これによって後戻りが起き、正しい歯列が確立された後でも、適切な固定をしなければ再度歯並びは悪化してしまいます。歯列の状態によっても後戻りの可能性に変化があり、前歯がかみ合わない開咬は特に、適切な術後矯正なくして後戻りは防げないと言われています。
参考
金銭の面でも魅力がある顎変形症手術は、医師からの説明だけでは良し悪しの判断が難しいかもしれません。情報を得すぎるのもよくはありませんが、様々な情報を加味した上で顎変形症治療を開始することが重要です。
私は一度手術を延期しましたが、それはネット上の手術によるリスクを知ったためでした。顔の変形の可能性に恐怖を覚え、延期することとなりました。これは治療中のことで計画の変更は、治療の質にも影響しかねません。自分でリスクを受け入れて選んだのであれば、口腔、精神、身体的に健康的な生活を続け、治療に臨むことが大切です。その際には、医師との治療についての認識合わせ、確認も徹底することを忘れないでください。