Google翻訳の結果をプログラムで取得する行為は規約違反となるのでしょうか。結論、違反の可能性は高いと思いますが、公式的な見解は見つけられませんでした。しかしながら、スクリプトによるGoogle翻訳利用にあたっては、従課金によるAPIか、Google Apps Scriptを利用するのが好ましいと思われます。
・裁判沙汰になるスクレイピング
AIの利用により、スクレイピングの利用が非エンジニアにも広がっている今日で、スクレイピングというプログラム手法も多くの人が耳にしていると思います。この手法はプログラムによるブラウザ情報を取得や操作することを指しますが、法律的に直接禁止するものではなく、利用するサービスによるとされています。
ではGoogle社関係でスクレイピングが問題対象になった事例ですが、直近Google社によるスクレイピング関係で提訴しました。参考:Why we’re taking legal action against SerpApi’s unlawful scraping

2025年12月19日、同社はSerpApi社に対し、違法的なスクレイピングが行われたとして告訴しています。被告側はGoogleサービスから検索情報や画像などをスクレイピングし、自社の利益にしていたと言います。
会社による営利目的のスクレイピングが行われていたわけです。ある1個人によるスクレイピングと比べれば被害額等の影響は少ないですが、量的な面ではなく質的な面で、このスクレイピングが規約違反になり、裁判問題に発展するということからプログラムによるサービス利用が、問題ないかどうかを把握する重要性を示しています。
・プログラムによるGoogle翻訳は問題か
多くのブログではVBAの他、Physonを使用したスクレイピングが紹介されています。そこではAPI利用の方法以外に、Http通信による無料の方法が紹介されています。これらから利用規約上問題はないように見えますが、グーグル翻訳の大元を見る必要があります。そこで根拠となるのが、各ページに設置されている利用規約と、robots.txtファイルです。
判断元:利用規約とrobots.txtファイル
ウェブサービスそれぞれに対しては、利用者が守るべきルールとなる規約が定められており、使用する場合はその規約順守が必要となります。Google翻訳サービスにおいても、利用規約が定められており、誰でもが閲覧できるようになっています。

そこではスクレイピングという言葉の記載はありません。代わりに「自動化」と検索すると、スクレイピング許可有無に関係するような文言が確認できます。

では「自動化された手段」とはなんなのでしょうか。実は規約上では定義が無く、ある意味で議論の余地を残した定義になっています。これは細かいことによるサービス利用性の影響や、ユーザによる不正利用を回避する目的があるのかもしれません。
しかしながら、自動化という事を一般的な考えである、「手作業を介さない、ソフトウェアによる継続的で機械的な動作」のようなことと考えれば、スクレイピング等が規約違反になると思われます。
そして、ここからもう一点確認必用なのが、robots.txtファイルというもの。利用規約では、このファイルに違反する、自動化が問題と書いてあります。
Robots.txtとは
・ウェブサイト管理者が、検索エンジンのロボット(クローラー)に対して「ここは見ていい、ここは見ないで」と指示を出すためのファイル
・ウェブサイトのルートディレクトリ(たとえば https://www.example.com/robots.txt)に置かれていて、誰でも見られる
そして、見ないでほしい個所は、Disallowで明記されています。
例
User-agent: *
Disallow: /private/
Disallow: /translate
この例だと:
- User-agent: * は「すべてのクローラーに対して」という意味。
- Disallow: /private/ や /translate は「このパスにはアクセスしないでね」という指示。
実際にGoogle翻訳サイトのファイルを見てみます・・・translate.google.com/robots.txt
ここではいくつかありますが、translateという文字が全面的にDisallowされていることが分かります。つまり、このサイトのrobots.txtを基にすれば、ページ上でのtranslateに関わるサービスや機能はクローラに対しては見ないように定められていると分かります。

クローラとは、ウェブページにある情報などを自動的、継続的に取得したりデータ化した入りするプログラムです。検索時に最適な検索結果も表示できるのもこのプログラムが関わっています。
では、スクリプトを利用する私たち個人がクローラといえるのかどうか。翻訳プログラムは確かに自動で情報取得しているわけですが、実行毎に作業者が実施しており、全自動で永遠と継続実施しているわけでもありません。ある意味、スクリプト実行時毎に作業者が実施しているもので、常に機能しているクローラとは異なるような、そんな考え方もできると思います。
Google社ユーザーコミュニティ
上記以外に、Google社に直接問い合わせをすればいいと思われますが、なんとその方法はありません。Google社は自社のサービスに対する問い合わせ手に対して、個人の問い合わせを受け付けたり、回答したりすることはないようです。
代わりとしてはGoogle社へ使用申請?のようなものや法律家に相談などありますが、個人が質問や回答を閲覧できるサービスとして、グーグルコミュニティが用意されています。ここではアカウントを持つ方が、製品について詳しい方に回答をもらうことができます。

例えば上記にGoogle翻訳と記載すれば、類似した製品説明ページやコミュニティでの質問回答を調べることが可能です。例えば、下記ではGoogle翻訳の資料を営業で無料使用できるかというスレッドがあります。

回答としては、多くが利用規約を参照にすること、わからなければ専門家に相談などを最終的な結論としています。

プログラム利用による利用規約違反という内容ではスレッドが見つかりませんでした。そこで下記のように質問してみました所、回答いただきました。回答は上記の通り、はっきりとした結論は得られていません。


纏め:分からない&Google社は見解を示すべき
結果、Google翻訳のスクリプトによる無料翻訳の妥当性の確実な判断は難しいです。同社が明言しない点や、ウェブ上で同様のプログラムが公開されていること等は、余計にGoogle翻訳のスクリプト利用の是非判断に混乱を生んでいます。Google社公式の見解を示すべきだと思います。
膨大なサービスの内、一つ一つに対する細かな見解を示すのは難しいですが、Google翻訳は最も利用されるサービスの一つであると思います。曖昧なままの状態であれば、個人的な利用で不本意に利用規約違反につながる可能性があります。さらに、Google翻訳は同社提供の有料APIが存在します。有料版と無料版が混在してしまえば、有料版を利用している利用者の利益がなくなるように思います。
GASによる無料の方法など様々な方法が存在し利用可能である現状は、技術の発展のおかげであります。加えてAIによる技術利用が市民化され、更に多くの人がプログラミング開発に携わることになり、個人によるウェブサービス利用における違法、違反的な利用がさらに引き起こされると考えられます。
それは、意図的なもの以外に、誤った利用による意図しない場合もあります。会社側、利用する個人双方に問題とならないよう、利用規約内容を発展する技術に合わせて具体的にし、何が問題であるか会社自身が見解を示すことが必要であると思います。
・代替翻訳マクロ
Google翻訳ページのHttpリクエストによる無料の翻訳方法は上記の通り、規約違反になるかが曖昧です。安全な方法としては、Google App ScriptやGoogle Consoleを使用した無料の翻訳も可能です。下記では、其々の方法を使用したワークシートで使用できる翻訳関数の他、選択箇所を一括で翻訳できるマクロを紹介しています。
